エドワード・コリー・バーン=ジョーンズ

(Edward Coley Burne-Jones, 1833-1898)

ウィリアム・モリスの生涯の盟友であり、画家としても著名なバーン=ジョーンズは、ウィリアム・モリスやアーツ・アンド・クラフツ運動を語る上で欠かせない人物です。

エドワード・バーン=ジョーンズ(ジョージ・ハワード画)
エドワード・バーン=ジョーンズ(ジョージ・ハワード画)

モリスとの出会い

1833年にバーミンガムで生まれたバーン=ジョーンズは、聖職者を志してオックスフォード大学エクセター・カレッジへ進学し、そこでモリスと出会いました。大学時代には、モリスと共にジョン・ラスキンによる『ヴェネツィアの石』を読み耽り、『建築や絵画についての講義』を通じてラファエル前派の存在を知ります。

バーン=ジョーンズとウィリアム・モリス
バーン=ジョーンズ(左)とウィリアム・モリス(右)
ラスキンとロセッティ
ラスキン(左)とロセッティ(右)

芸術の道へ

1855年、バーンー=ジョーンズはラファエル前派の最初のパトロンとして知られるトマス・クームのコレクションを目の当たりにし、とりわけダンテ・ゲイブリエル・ロセッティに対して崇敬の念を抱きます。さらにその年の夏、モリスら学友とともに中世美術を学ぶためフランスを訪れ、アミアンやシャルトル、ルーアンなど各地の大聖堂を巡りました。次第に芸術への憧れを強めていったバーン=ジョーンズは、聖職者への道を捨て、画家を志すことを決意します。

「ベアトリーチェの一周忌」ロセッティ

ロセッティに師事

1856年1月には念願叶ってロセッティとの面会を果たし、1日も早く画家になることを願って卒業を間近に控えたオックスフォード大学を退学。ロセッティから直接指導を受けるためロンドンへ移り住み、その他にも画塾を掛け持ちして絵画の修練に没頭しました。その熱心な姿勢を認めたロセッティより、彼自身が使用していたレッド・ライオン・スクエア17番地のアトリエを使うよう勧めを受け、少し遅れてロンドンへやって来たモリスと一緒にそこで暮らし始めます。1857年には、ロセッティが依頼を受けたオックスフォード大学にあるオックスフォード・ユニオン(学生会館)のディベーティング・ホールのための壁画制作に誘われ、モリスと共に加わりました。また、ロセッティの紹介によりステンドグラスの生産で知られるパウエル社と契約し、ステンドグラスの下絵を手掛けるなど、画家としてのキャリアを積み始めます。

オックスフォード・ユニオン

デザイナーとして

1861年、モリスやロセッティら仲間たちと共に「モリス・マーシャル・フォークナー商会」の共同設立者となったバーン=ジョーンズは、商会で扱われたステンドグラスやタペストリー、絵付けタイル・パネルなどのデザインを手掛けます。とりわけステンドグラスは、当時の商会における収入の4分の3を占める主力分野であり、バーン=ジョーンズはステンドグラスのデザインを誰よりも多く担当しました。商会での仕事においては、モリスやウェッブと共同でデザインを手掛けることも多く、モリスが植物、ウェッブが動物、バーン=ジョーンズが人物を描くなど各々が得意分野を分担して一つの作品を制作することもありました。

ブランプトン、聖マーティン教会のステンドグラス(バーン=ジョーンズ)

画家として

初期からステンドグラスのデザインや水彩画に専心し、その努力の甲斐あって、バーン=ジョーンズは1864年に王立水彩画協会の一員に選ばれました。1859年から1873年までに4度イタリアへ赴き、ヴェネツィア派やミケランジェロとマンテーニャの作品を熱心に研究・吸収したことで、師ロセッティの画風に忠実な表現から、より独自の表現へと変貌を遂げます。1877年には、グローヴナー・ギャラリーの記念すべき第1回展覧会に《ヴィーナスの鏡》(グルベンキアン美術館、リスボン)を含む8点もの作品を出展し、その量だけでなく質においても同時代のイギリス画家たちを圧倒しました。また翌年にはパリ万国博覧会への出品を果たし、19世紀末イギリスを代表する画家としての地位を築きます。

「ヴィーナスの鏡」バーン=ジョーンズ

モリスとの交友関係

大学時代より始まったモリスとの付き合いは、商会がモリスの単独経営による「モリス商会」へ改組された後も続きます。モリスが晩年に立ち上げた「ケルムスコット・プレス」の刊本にも、バーン=ジョーンズは挿絵や縁飾り、装飾文字のデザイン等を提供しました。モリスが亡くなる4ヶ月程前に上梓された『チョーサー作品集』は、モリスによる指揮の元、バーン=ジョーンズが87点にも及ぶ挿絵を提供した大作で、世界で最も美しい書物の一つとして知られています。

「ジェフリー・チョーサー作品集」ケルムスコット・プレス
画像クレジット
  • [バナー画像] アブサロムの窓 - セント・ジョン・ジ・エヴァンジェリスト教会北側側廊 - 1872-90年 - モリス・マーシャル・フォークナー商会 ... photo © Brain Trust Inc.
  • Edward Burne-Jones by George Howard ... photo in public domain.
  • Burne-Jones and Morris 1890 by Frederick Hollyer ... photo in public domain.
  • John Ruskin, D.G.Rossetti and W.B.Scott by W. Downey, modified ... Wellcome Collection, licensed under Creative Commons CC BY 4.0.
  • トマス・クームが所蔵していた、ロセッティによる《ベアトリーチェの一周忌》(アシュモレアン博物館、オックスフォード)。The First Anniversary of the Death of Beatrice, 1853, by Dante Gabriel Rossetti ... photo in public domain.
  • オックスフォード・ユニオン内、ディベーティング・ホール (2016年撮影) ... Photo ©MIneko Orisaku ©Brain Trust Inc.
  • セント・マーティン教会内陣東窓 - デザイン:エドワード・バーン=ジョーンズ - 1880-81, モリス商会 ... photo ©Brain Trust Inc.
  • The Mirror of Venus, by Edward Burne-Jones, 1898 ... photo in public domain.
  • 『ジェフリー・チョーサー作品集』1896年 / The Works of Geoffrey Chaucer (The Kelmscott Chaucer) , 1896 ... photo in public domain.
参考文献
  • ブレーントラスト編『「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展カタログ』印象社、2010年。
  • ブレーントラスト/求龍堂編、藤田治彦監修『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』求龍堂、2017年。
  • 斎藤貴子『ラファエル前派の世界』東京書籍、2005年。
  • 蛭川久康『評伝 ウィリアム・モリス』平凡社、2016年。
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モリスとアーツ&クラフツ
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